SDTMの採否情報はどうあるべきか

カテゴリー: CDISCラボ

今回のエントリは、SDTMに採否情報を含めるべきか…という観点での考察です。

採否について、いくつかの方面から考えてみましょう。

1. 臨床試験データの解析処理における役割
2. CDISC標準における採否情報の位置づけ
3. 実務的な意義
4. Reviewerにとっての意義
5. 考えられる選択肢


1. 臨床試験データの解析処理における『採否』の役割
臨床試験のデータは解析処理されることで、意味のある結論を引き出すことができます。あらゆるデータの品質が完璧であれば、手元のデータの全てを用いることでしょう。しかし、実際の臨床試験データは不完全であり、品質が低い場合もあります。例えば、重大な有害事象が発生していれば、人命を優先して治療を行うべきです。その治療では、(薬剤を評価する上で)併用するべきではない薬剤が使われるかもしれません。統計解析上、このようなデータの汚れは避けたいところです。しかし、ヒトを対象とする臨床試験において、倫理的な配慮は必要です。このような不十分なデータは解析処理時に除外されなければなりません。

このような除外の情報を『採否』と呼びます。採否には『症例そのものを除外する』レベルと『特定のデータポイントのみを除外する』レベルがあります。統計解析上、いずれの採否情報も重要なインプットとなります。


2. CDISC標準における採否情報の位置づけ
CDISCにおいて『採否情報』はどのように位置づけられているのでしょうか?

SDTMは臨床試験で収集したデータを表示する目的で作られました。採否情報は収集したデータではありません。そのため、採否情報を格納する変数は存在しません。一般的にSDTMはデータそのものを列挙することを重視しています。例外的にベースラインフラグ(--BLFLG変数)が含まれています。これは、初期段階の設計ミスに由来するようです。

しかしながら、SDTMに『症例の採否』を含める規定が存在します。SDTM IG 3.1.3ではAppendix C5にて、SUPPDMドメインに症例の採否を含めるための値が記述されています。『データポイントの採否』の情報を格納する変数はありません。

20130308a.jpg

これに対応してADaM IG 1.0には、SDTMの採否情報をADaM変数に変換するガイドラインが記載されています。しかしながら、SDTM上の採否が必ずしもADaMに移行するとは限りません(一部の例外で、SDTMとADaMの採否が異なります)。

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3. 実務的な意義
採否情報は統計解析にとって必須の情報です。『症例の採否』、『データポイントの採否』の両者が必要となります。SDTMは『症例の採否』に対応しています。そして、『データポイントの採否』はSDTMに含めるべきではありません。なぜならば、収集データの表示に差し支えるからです。すなわち、SDTMに『症例の採否』を含めても、統計解析担当者にとって不十分な情報提供にしかなりません。


4. Reviewerにとっての意義
『症例の採否』は統計解析担当者にとって必要ではありますが、十分な量の情報ではありません。そのような不十分な情報に意味はあるのでしょうか?SDTMをレビューする当局の担当者にとっては、それなりの意味がありそうです。もし、SDTMに症例レベルの採否情報が含まれていれば、ADaMデータセットを閲覧して症例の採否を探すよりずっと楽でしょう。症例の採否情報は限られています。したがって、SDTMデータの閲覧に支障を来たすことも少ないと考えられます。

(※データポイントの採否がSDTMに含まれていると、情報量が多すぎてレビューに支障が出る危険があります)


5. 考えられる選択肢
以上のことから、SDTMに『症例の採否』を含める意義は次のようになります。
 ・レビューワーにとって有益である
 ・統計解析担当者にとって、不十分である

次に、SDTMに『症例の採否』を盛り込む手順について考えてみましょう。ここでのポイントは『症例の採否』が発生する場所です。

例えば、データマネージャーが採否を作成する場合を考えましょう。このとき、データマネージャーは「症例の採否」と「データポイントの採否」の両者を持っています。これらの情報をSDTMから独立して解析担当者に手渡すことができます。若しくは「症例の採否」に限り、SDTMデータセットに埋め込んでもよいでしょう(※ただし、稀にSDTM中の「症例の採否」がADaM中の「症例の採否」と一致しないことがあります)。

統計解析担当者が採否を取り扱う場合はどうでしょうか?この場合、SDTMに「症例の採否情報」は含まれません。情報を含めるためには、ADaMデータセットの情報をSDTMへ転送することになりそうです。

どちらのケースでも『SDTMに症例採否を含めない』という選択肢を取ることができます。この場合、データレビューワーにとっての利便性が失われるでしょう。この是非を決めるのはスポンサーと規制当局の相談になりそうです。
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