これくらいは知っておきたいHL7

CDISC標準を学ぶために、CDISC発行の各種文書を読み込むことが重要です。しかし、それだけでは視野が狭くなります。できれば周辺知識や情報を把握しておくべきでしょう。今回のエントリは、そんな周辺知識の1つ「HL7」を簡単に眺めてみます。

1. HL7って何?
HL7は『医療情報交換のための標準規約』を策定している団体の名前です。とはいえ、標準規約そのものをHL7と呼ぶこともあります。HL7は"Health Level 7"の略称です。

※もし、OSI参照モデルを知っているなら「第7層の規格を作成しているからHL7」と覚えるとよいです。


2. HL7標準って何?
HL7標準は、HL7が策定した『医療情報交換のための標準規約』です。医療情報交換とは、医療現場のあらゆる情報交換を指します。たとえば、患者紹介・検査報告では、被験者の背景や検査結果といった情報がやり取りされます。これらは"医療情報交換"の例と言えます。HL7標準は、情報交換に用いる"お約束事"であると考えてください。そして、HL7標準は「あらゆる情報交換」を想定していることに注意してください。


3. Interoperability
世の中には様々な情報が溢れています。しかし、それらの情報は得てして孤立しています。もし、それら情報が有機的に結びつき、再利用されるなら、世の中はより効率的になるでしょう。情報を再利用できることを「Interoperability」と言います。これはCDISCでも登場する重要な概念です。HL7も、Interoperabilityを目的としています。

Interoperabilityを実現するには、2つの壁を乗り越えなければなりません。

壁その1:データが交換できること。
当然ですが、データのやり取り(通信)ができなければなりません。極端な例を挙げれば『電子メールの送受信』ができなければ、やりとりそのものが不可能になります。これは機能的Interoperabilityと呼ばれます。

※データ交換には様々な準備が必要です。物理的な設備(通信装置)や通信データの構造(通信プロトコル)などです。HL7はOSI参照モデルの第7層を取り扱います。すなわち、アプリケーション層の規約となります。


壁その2:受け取ったデータが解釈できること
メールを受け取ったとしても、知らない言語で書かれていたら(例えば古代エジプトのヒエログリフで書かれていたら!)、意味を理解することができません。意思疎通を図るためには『誰にでも、誤解なく解釈できる言葉』を用いる必要があります。これは意味的Interoperabilityと呼ばれます。

※意味的InteroperabilityをSemantic Interoperabilityと呼んでもよいでしょう。


機能的Interoperabilityは、送受信データの規格で解決されます。つまり、通信データの構造を決めればよいのです。具体的な例としてXMLスキーマがあるでしょう。意味的Interoperabilityを達成するには、きちんとした用語の定義が必要です。例としてオントロジーがあります。


4. 医療情報交換に適したデータ構造(スキーマ)は?
機能的Interoperabilityを達成するために、どのようなモデルがよいでしょうか?これはシンプルで、かつとても難しい問題です。HL7はこの難解な問題に取り組み、RIM(Reference Information Model)という答えに辿り着きました。この解が適切かはさておき、ある程度の利用価値があることは間違いありません。

RIM_oa.png
[RIMの概略図]

RIM_detail.png
[RIMの詳細]

上の図はHL7が開発した『あらゆる医療情報交換で使える一般的なデータモデリング方法』です。このモデルの一部(または全て)を用いれば、誰でも自分が必要とするデータ構造を決定できます。そのデータ構造はRIMのサブセットとなります。場面に応じて、さまざまなサブセットをいくつでも作成できます。

この手法がすばらしい点は、手本としたモデルが同じであることです。派生元が同一ならば、任意のサブセット同士で、共通のコンポーネントを見つけられます。同じ定義の要素ならば、内容の比較ができるでしょう。これはデータの再利用性を保証する仕組みとして大変素晴らしいものです。

※オブジェクト指向に詳しい方は、RIMを抽象クラスと解釈するとよいです。また、サブセットは、上位クラスから派生したクラスと捉えればよいでしょう。

※RIMは汎用度が抜群に高く、どんな場面でも応用できます。しかし、同時に難解すぎるという弱点も持ちます。RIMを理解する必要はありません。その存在を認識しておけば十分でしょう。


5. CDA (Clinical Document Architecture)
HL7はあらゆる場面に対応できるように設計されています。そのため、非常に一般的で、わかりにくくなっています。HL7を有効に利用するよい方法の一つは、既に誰かが設計してくれた"サブセット"から手をつけることです。特に有用なサブセットとしてCDAがあります。CDAは「診療文書」を交換するための規約です。


6. CDISC標準とどう関係するの?
CDISC標準を学ぶ上で、HL7にはいくつかの価値があります。

1. どちらも情報交換を目的としている。同じ目的を達成するための規格を知っておくことは、とてもよいアイデアである

2. 医療情報交換がHL7で実施されるなら、HL7形式でデータを引き抜くことができる。たとえば、電子カルテデータをHL7形式で呼び出すことができる。それをCDISC標準形式に変換すれば、効率化が図れそう。

実務を考慮するなら、後者の案件が興味深いでしょう。また、CDISCを題材とした講演会では、HL7を利用したプロジェクト等の紹介があります。HL7に関する基本的な知識は、聴講の際に必ず役立つでしょう。


参考サイト
日本HL7協会:http://www.hl7.jp/index.html
HL7 Version 3 -- Gateway to Electronic Patient Records:http://www.hl7.jp/docs/seminar/Special3J.pdf
CDA理解のためのHL7v3入門:http://www.jpacs.jp/html/event/1_Masuda_HL7V3.pdf
HL7 CDA入門 - 日本HL7協会:http://www.hl7.jp/docs/2.HL7%20CDA_hirai.pdf
2013-07-18(Thu)
 

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TKD + SMZ

Author:TKD + SMZ
ガレージキット組み立て中級者
子育て初心者

2007年に友人の薦めでガレージキット組み立てを開始。その面白さに目覚める(w

2011年にお付き合いのあった原型師さんに薦められて、原型製作を開始。ワンフェスに参加しています。2017年から、活動を一時休止しております

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