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逆襲のEFPIA

カテゴリー: CDISCラボ

ヨーロッパで話題になっている「臨床試験データの公開ガイドライン」。それに対抗するEFPIAの記事がありました。

http://www.pharmatimes.com/Article/13-09-09/EFPIA_challenges_EMA_data_transparency_plans.aspx

EFPIAが政府機関発行のガイドラインに反対する理由は3つあります。

1) 情報公開による個人情報保護の喪失

→ 臨床試験データは個人特定できないように加工されている。しかし、他のデータ(例えば、患者データベースから何らかの名簿、果てはSNS上の情報まで)と組み合わせると、個人が特定できる可能性がある。政府がデータ公開を指揮する以上、公開した情報の匿名性が確保されるように取り計らう責任が政府にある。例えば、SNSで何を記述するかを制御することは難しい。そうなると、慎重に情報公開を検討するべきである。

→ ヨーロッパでは Data Protection Regulation がある。この規制によれば、個人情報になる可能性があるデータを公開するためには、もっとも厳しい基準を満たす必要がある。「臨床試験データの公開ガイドライン」は、そこまで厳しくない。即ち、このまま有効にするべきではない。


2) 公開したデータを(故意に、もしくは偶然に)誤った方向に解釈できる。結果、政府が承認した薬剤の信頼性が揺らぐ

→ 「臨床試験データの公開ガイドライン」に基づくと、研究者は申請を行うことで、臨床試験のデータにアクセスできる。この際、研究者は身元を明らかにするべきだし、その結果を速やかに公開するべきである。また、データの利用目的を事前に審査する必要がある。

※当局も事前審査の必要性を認めている。


3) 会社の売上に関心がない機関が情報公開するため、企業にとって公開してほしくないデータまで公開されてしまう。結果的に、企業は薬剤開発をしなくなる

→ 「臨床試験データの公開ガイドライン」では、被験者レベルの臨床試験データをCCI(commercially confidential information)と認めていない。ガイドライン中でCCIは次のように定義されている『一般に公開されていない情報で、公開することで情報所有者の合法的な経済的利益を損なうもの』。薬剤の種類や販売形態によっては、被験者レベルのデータが利益に直結する。一律に被験者レベルのデータを公開することは適切ではない。


当ブログ的に、色々

(1) 遺伝子情報を取り扱うようになると、個人が容易に特定できてしまう。したがって、臨床試験データからPharmacogenomics関連情報を除外しないとかなりマズい。とはいえ、Personalized Medicineが発展してくると、再解析上どうしても必要な情報になるかも。情報処理能力・技術が向上しているので、他のデータと結合して個人を特定するのは、それほどの夢物語でもないでしょう。

(2)と(3) この2つを考えると『公開前に協議が必要。協議の相手は、データにアクセスしたい人と、データを公開される企業』ということになりそう。協議のための窓口が必要になるため(GSKは専門の窓口があるようですが)、準備期間が必要になる。また、協議に時間が必要になるし、反対意見が出されることもありそう。結局のところ、ガイドラインが無力化されるような気がします。


果てさて、結果はどうなることか!?
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